本記事のテーマ
時々、経済ニュースに出てくるキャリートレードと、その方法ついて解説します
キャリートレードとは
『焦点:キャリートレードが再び人気、足元は「理想的環境」』(ロイター、2019/3)
このように経済記事の紙面で、キャリートレードという単語を見かけたことがある方もいらっしゃるでしょう。
「キャリー」とは利回りのことであり、「キャリートレード」とは、(値上がり益ではなく)利回り狙いの取引のことです。
例えば、以下は全て、キャリートレードの一種といえます。
1)高配当株を買う
2)ブラジルレアル建てなど、高金利通貨建ての債券を買う
3)ネット銀行等が行っている、高金利のキャンペーン預金にお金を預ける
4)外貨預金を使い、高金利通貨で預金する
5)FXで低金利通貨を売り、高金利通貨を買う
6)利回りの高い、地方の築古不動産を買う
このうち5)が、キャリートレードといわれることが多いです。
5)とそれ以外では、1つ大きな違いがあります。
5)以外は日本円を原資に、高金利の商品に投資するため、その投資先の金利で概ね、運用利回りが決まります。
5)に関しては、売る通貨(低金利通貨)と買う通貨(高金利通貨)の金利差で運用利回りが決まります。以下では5)を「FXのキャリートレード」と呼ぶことにします。
FXのキャリートレードとスワップポイント
FXのキャリートレードとは、FXで低金利通貨を売って、高金利通貨を買うことです。
例えば、低金利通貨として円を売り、高金利通貨としてドルを買うことが考えられます。
例えば外貨両替なら、窓口でドルを買って、円を売る(ドルの代金を円で支払う)ことになりますね。それと似たようなものです。
ただしFXでは、実際に持っている円を使うわけではないという点が、外貨両替と異なります。
ドルを買う時に、対価として売却する円は、借りてきます。その時の担保となるのが、証拠金です。証拠金以上の金額を借りることを、レバレッジを掛けるといいます。
さて、ドル円でドルを買った場合、購入したドルに対しては、ドルの金利が付きます。
ドルを買う際に支払った円は、借りたものなので、円の金利を支払う必要があります。
よってFXにおいて、ドル買い・円売りを行うと、ドルの金利を受け取り、円の金利を支払います。これを、スワップポイントと呼びます。
ドル買い・円売りのスワップポイント = ドルの金利 - 円の金利
この式からわかる通り、高金利の通貨を買って、低金利の通貨を売れば、受け取ることが出来るスワップポイントは大きくなります。
またFXでは、円以外も借りてきて、売ることが出来ます(注)。例えば、円よりも金利が低いユーロを売って、ドルを買う、といったことも出来ます。そうすると、円を売ってドルを買うよりも、高い金利(スワップポイント)を得ることが出来ます。
(注)証拠金は円で入金しますが、買う通貨だけでなく、売る通貨も、円以外を指定することが可能です。
ドル買い・ユーロ売りのスワップポイント = ドルの金利 - ユーロの金利
スワップポイント(利回り)の具体例
円を売って、何らかの通貨を買ったとき(例えば円売りドル買い)のスワップポイントを利回りに直したものが、下図の通りです(2021/1/15)。
例えば円を売ってトルコリラを買うと、年間で6%の利回りを得ることが出来ます。
その一方で現在は、ドルやポンドを買っても、ほとんど金利が付きませんし、日本よりも金利が低い、スイスフランやユーロを買うと、金利を支払うことになります。
キャリートレードの前提
キャリートレードでは、高金利通貨と低金利通貨の金利差を収益源とします。
そして買い持ちしている、高金利通貨の価値があまり下がらないことを前提としています。
高金利通貨の国は政治、経済が不安定で、通貨の価値が下落することも多いです。よって、金利の高さだけでなく、その国の政治、経済情勢が今後、改善する見込みか(少なくとも、大幅に悪化する見込みはないか)を確認する必要があります。
スワップポイントの確認方法
各FX会社が、スワップポイントを公表しています
DMM FX
サイトへ進む→左上のDM FX をクリック→DMM FXの特徴→スワップポイント
スワップポイントは、通貨ペアで異なります
また下の例だと、売り-10、買い7となっています。つまり、売りと買いを両方行うと、(-10) + 7 = -3で、損になります。見方を変えると、この3が、FX業者の収益になります(手数料の一種のようなものです)。
FXでは売買の際、売値と買値が異なり、その差がFX業者の収益となりますが、スワップポイントも同様といえます。
曜日によってもスワップポイントは異なります。例えば1/14(木)に4日分のスワップポイントがもらえるのは、1/15、16、17にスワップポイントが付与されないからです(その分、前倒しでもらいます)。
まとめ
今回はキャリートレードについて解説しました。
キャリートレードは、ヘッジファンドが行う取引と考えられがちですが、FXを使えば、個人でも簡単に始めることが出来ます。
この取引は、投資先の高金利通貨の価値が大きく下落しないことを前提としているため、FXでキャリートレードを行う際は、その国の政治、経済の情勢が悪化していないかどうかを確認する必要があります。
確認することが面倒という方は、少なくとも、その通貨の直近の値動きだけは見るようにしましょう(例えば、日本円売り・トルコリラ買いなら、トルコリラ円の直近の値動きを確認しましょう)
もしその通貨が下落トレンドにあるならば、そのキャリートレードは、下落が落ち着くまでは、見送った方がよい場合が多いです
今回の内容が投資の参考になれば幸いです。
コメント