日銀はETFを売却したことがない
本日の日経ヴェリタスに、
売らぬ日銀「買い効果」拡大
との記事が掲載されていました
日銀は年間6兆円ペースでETFを買っていましたが、売却をしたことはないので、株式市場には恒常的に買い圧力が掛かります
そうすると、浮動株比率が低い銘柄の株価が上昇しやすくなります
浮動株比率とは
浮動株比率とは、発行済株式のうち、市場に出回っている株式の比率です。
(発行済株式 - 大株主などが保有する株式)÷発行済株式
で定義されます。
例えば、A社の株式が100株発行されていて、そのうち20株は社長が保有し、残り80株は様々な人が売り買いしている状態なら、浮動株比率は80%になります
浮動株比率が低い銘柄の株価が高くなりやすいことと、日銀のETF買入の関係
例えば日本に3社しかないとしましょう
日銀はTOPIX連動のETFを買っていますので、この3社の株式をまんべんなく買います
3社の発行株式数は全て100株としますが、浮動株比率が異なるとします
A社
大株主などが保有している株10株、浮動株90株
B社
大株主などが保有している株40株、浮動株60株
C社
大株主などが保有している株80株、浮動株20株
日銀が1回ETFを買うと、A、B、C社の株を1株ずつ買うことになるとします
3社ともに、100株発行されているうち、1株が買われるので、日銀のETF買いによる株価への影響は一見同じです
しかし実際は、売買されるのは浮動株なので、日銀がETFを1回買うと、以下のようになります
A社:90株のうち1株が買われる
B社:60株のうち1株が買われる
C社:20株のうち1株が買われる
Aの場合は、全体の1÷90=1.1%が買われるに過ぎませんが、Cだと全体の1÷20=5%が買われるので、Cの方が、株価が上昇しやすいということです
浮動株比率の高低に注目した投資戦略
冒頭の記事においては、毎月、
・東証一部の浮動株比率が下位10%の銘柄を買い、
・東証一部の浮動株比率が上位10%の銘柄を売る
ことで、2010末以降で見ると、150%のリターンが得られたとのことでした
この戦略は、売りを組み合わせることでリターンの安定化を図っていますが、TOPIX自体が上昇した機関ですので、買いのみにすれば、さらに高いリターンが得られたことになります
この戦略のデメリットと、それを補う方法
この戦略のデメリットは、下げ相場に弱い、ということです。
浮動株比率が低い銘柄は、1株買われたときの株価上昇率が高い一方、1株売られたときの株価下落率も高くなります
さらに日銀が今年3月、年間6兆円というETFの買い入れ目標を撤廃し、ETFの買い入れペースを減速させていますので、日銀のETF買いによる株価押上げ効果も、以前よりは低下しています
この弱点を補うために、記事では、浮動株比率に加えて、業績の伸びを考慮することを勧めています
業績が伸びている銘柄であれば、日銀のサポートが減っても、あるいは、下げ相場でも、底堅く推移するだろう、ということです
そのような銘柄の例として、以下が掲載されていました
7034 | フロレド |
9983 | ファストリ |
2327 | NSSOL |
2678 | アスクル |
4745 | 東京個別 |
4689 | ZHD |
2384 | SBSHD |
2491 | Vコマース |
2670 | 日本調剤 |
日銀がETFを売却したら
日銀は3月末時点で35兆円のETFを保有しています
日銀が将来、ETFの売却を行えば、上記の逆が発生し、浮動株比率が低い銘柄には強い下げ圧力が掛かるでしょう
日銀がETFを売却する前でも、そのような観測が台頭した時点で、このような動きが発生し得ることには注意したいところです
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