2021年6月5日の日経朝刊に『豪州株指数、最高値を更新 景気回復期待』という記事がありました。
豪州株が強い背景を深堀してみたいと思います。
2021年4月以降の豪州株の伸びは、米国を上回る
2021年4月以降で各国の株価指数を比較すると、豪州株は日本だけでなく、米国、欧州よりも高い伸びを示しています。
・2021年4月を100とした場合の株価指数
ワクチン接種回数の比較
コロナ以降のニュースでは、株高の時には決まって「コロナ後の経済回復期待」という説明がなされます。
この観点からは、ワクチン接種のペースが速い国の株価が上がりやすいことになるでしょう。
米国では2021年5月からワクチン接種のペースが鈍化しました。これは、ワクチン接種を希望する人の多くがすでにワクチンを接種したためです。
豪州や欧州に関しては、ワクチン接種が急ピッチで進んでいますので、ワクチン接種の進展が豪州株や欧州株を押し上げているといえます。
ただし下図を見る限り、豪州と欧州のワクチン接種のペースはどちらも同じようなペースですので、ワクチン接種だけでは、豪州株が欧州株よりも強い理由にはなりません。
・各国の累積ワクチン接種回数(Mは百万を意味します)
注:国、地域で人口が異なるので、累積ワクチン接種の数ではなく、ワクチン接種の増え方(グラフの傾き)が重要となります。
新規感染者の数
それでは、新規感染者の数はどうでしょうか。
下図は、世界、米国、欧州、英国、アジア、豪州、日本の新規感染者数を表示しています。
・新型コロナの新規感染者数(Mは百万を意味します)
豪州に関しては、2020年秋から新規感染者数はほぼゼロです。
つまり、「豪州で新規感染者が減ったから、豪州株が上昇している」という訳ではなさそうです。
世界的な経済活動の再開、石炭価格の上昇
石炭は火力発電所等での燃料だけでなく、鉄の原料としても使われます。
豪州は世界最大の石炭輸出国ですので、豪州経済は石炭価格の影響を強く受けます。
足もと世界的に経済活動が再開する中で、石炭の需要が高まり、石炭の価格も上昇しています。
よって、世界経済の回復が、石炭を産出する豪州にとって追い風、言えるでしょう。
・石炭価格と豪州株
豪州中銀は緩和を継続。利上げは2024年以降か。
米国では緩和縮小(テーパリングの)に向けての議論が進捗していますが、豪州の中央銀行は、緩和縮小に対して慎重です。
”オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)のデベル副総裁は6日、国内経済の回復は予想を大幅に上回っているが、賃金の伸びが依然として著しく低いため、当面は大規模な金融政策が必要だとの認識を示した。”
”RBAはインフレ率が目標圏内に入るのは早くても2024年以降になると予想”
(どちらもロイター、『豪中銀の大規模な金融政策なお必要、賃金が伸び悩み=副総裁』、2021/5/6)
このように、豪州中銀が緩和的姿勢を続けていることも、豪州株式の支えとなっています。
米国でテーパリングが開始されても、豪州株は下げにくい
NY連銀が今年4月に行った調査によりますと、米国では2022年からテーパリング開始、2023年から利上げ開始が想定されています。
その一方で上記の記事を踏まえますと、豪州が利上げに踏み切るのは2024年以降と見られています。
今後、米国で緩和が縮小され、米国株が調整することがあっても、豪中銀の緩和的姿勢に支えられ、豪州株は堅調に推移するとみています。
以上となります。参考になれば嬉しいです。
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