原油市場アップデート(OPECプラスの会合中止で原油急騰→反落)

コモディティ

最終更新:2021/7/7

OPECプラス決裂で原油の増産見送りも、原油価格は下落

2021/7/5に予定されていたOPECプラス会合が開催されることなく決裂し、原油の増産(減産幅の縮小)が見送られたことで、原油価格は上昇しました。

しかし7/6に原油価格は下落

その背景は2点あります。

1)OPECプラス加盟国の結束が弱くなり、産油国が自国の利益を優先し、無秩序に原油を増産する可能性が意識された

2)銅を初めとする工業用金属など、他のコモディティは5月あたりから低下に転じており、コロナ後の景気回復期待が一巡していたことが示唆されます。

原油だけがコロナ後の最高値を更新し続けていましたが、うやく原油も他の商品と整合的な動きになったとみることが出来ます。

・WTI(CL1)と工業用金属

WTI, metal

上記の2)が原油価格下落の要因ならば、原油価格の下落はしばらく続く可能性があるとみています。

その場合、リフレトレードの後退が意識され、景気敏感株を中心として、株安につながる可能性には注意したいところです。

(下記の記事更新日:2021/7/6)

OPECプラスの中止

OPEC+は合意が難しいとの判断から、2021/7/5に予定していた閣僚会合の開催を中止しました『OPECプラスは合意に至らず、5日の会合中止-原油相場急伸』(ブルームバーグ)。

サウジアラビアとUAEとの間での妥協が実現しなかったことが原因です。

次にいつ、会合を開催するかについても合意が出来ていません

会合中止で原油価格急騰の理由

会合の中止を受けて、原油価格は急騰しています。

The failure of OPEC+ to reach a deal pushed crude higher.

2020年12月以降、原油価格の上昇が続いています。

産油国は価格上昇を和らげるために、原油産出量の引き上げ(正確には減産規模の縮小)を検討していました。

それは原油高に苦しむ原油消費国からの圧力があったためです。

oil

主要な産油国から構成されるOPECプラスは、先週には原油産出量の引き上げ(正確には減産規模の縮小)の合意に近づいていました。

しかし今回、合意が見送られたことで、原油の産出量が少ない状態が継続することになり、原油価格が一段と上昇しました。

サウジとUAEの不仲で合意見送り、会合中止

2021/7/5にOPECプラス会合が予定されていました。

しかし土壇場でUAEは自国の割当枠の計算について、サウジと同様の条件が認められるようになるまで合意を阻止すると表明したことで、協議は中断されました。

サウジアラビアとUAEの不仲が合意見送り、会合中止の原因となった形です。

エナジー・アスペクツの共同創業者でチーフ石油アナリストのアムリタ・セン氏は

「サウジアラビアとUAEは外交や経済、安全保障を巡る政策や、原油政策自体に関する見解の溝を深めており、これが今後のOPEC協議を複雑にするだろう」

と述べており、サウジアラビアとUAEの関係回復が容易でないことが分かります。

今後もOPECで産油量引き上げ(正確には減産幅の縮小)に関する合意が出来なければ、原油価格は高止まりし続けることになります。

UAEを無視して、UAE以外が産油量引き上げ(正確には減産幅の縮小)をしたらどうなる?

UAEを無視して、UAE以外の国が産油量を引き上げれば、原油価格は下落します。

産出量を引き上げた国は、

「(原油の売り上げ量は増加)×(原油価格は下落)=売上高は横ばい」

となります。

UAEは産油量を増やさないので、

「(原油の売り上げ量は横ばい)×(原油価格は下落)=売上高は減少」

となります。

このように、UAEにとって不利な状況となるので、UAEも増産に参加する可能性が高いです。

つまり、UAEがOPECの方針に従うことになります。

ただし、OPECが一枚岩でないことが露呈してしまい、OPECの弱体化につながります

OPEC加盟国は13カ国ですが、米国やカナダ、メキシコなど、OPECに加盟していない産油国も多く、OPECだけで原油価格をコントロールできるわけではありません。

OPECへの信頼感が失われれば、OPECが原油の増産を行い、原油価格を引き下げようとしても、原油市場の参加者がOPECの決定を無視すれば、原油価格は下がらなくなってしまいます。

よってOPECはUAEを無視して増産を行うことは出来ません。

脱炭素の中で、なぜ原油高?…今後も原油価格はさほど下がらない可能性も

世の中で脱炭素、カーボンニュートラルが叫ばれているなかで、なぜ原油価格が上昇するのでしょうか。

それは、以下のような流れが原因です。

脱炭素により、将来の原油価格は下がるだろうと、産油国が判断

早めに原油の生産を引き下げておく。また原油の精製所も操業を徐々に縮小。その結果、原油の供給は減少。

ただしすべての車が電気自動車になった訳でもないので、原油への需要は引き続き高い。

更に経済再開で、自動車の往来も増え、原油への需要が一段と増加

原油価格上昇

将来的に、原油への需要は減るでしょう。ただしその分、原油の産出量も減るならば、原油価格が下がるとは限りません。

原油高の株、為替への影響

原油高は、ノルウェー、カナダなど、産油国の通貨にとっては押し上げ要因です。

また原油高はインフレ率を押し上げることで、各国中央銀行の緩和姿勢を後退させます。

この点では、株式にとってネガティブといえます。

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