米国の債務法定上限(デッド・シーリング)の対応期限は2021年9月頃か

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デッド・シーリングとは

デット・シーリングは、米国における連邦債務(米国債)の上限額のことをいいます。

債務残高(≒米国債の残高)が上限額に達した場合、新たな借入を行うためには、議会による上限引上げの立法措置が必要となります。

債務残高が上限に達すると、一部の重要な機能(軍、警察、消防など)を除く政府機能(統計の作成など)が停止されます。

2021年7月31日で上限の適用除外措置が終わる

2019年に決定した財政合意により、2021年7月31日までは、連邦債務法定上限は適用除外措置が採られています。

2021年8月1日になると、法定上限はこれまでの22兆300億ドルに、適用除外期間中に増加した連邦債務残高を加算した額が、新たな法定上限となります。

米国という国家が倒産!?

今後、連邦債務残高がさらに増えて上限を超えた場合、新規に米国債が発行できなくなります。そうすると、過去に発行した米国債の償還金を支払うことが出来なくなるので(注)、米国はデフォルト(債務不履行)となる可能性があります。

米国がデフォルトする可能性が高くなると、米国に関連する資産価格の下落、具体的には、
米国債価格の下落(米金利上昇)
ドル安
米株安
が発生する可能性が高いでしょう。

(注)額面1ドルの国債が満期を迎えると、元本(1ドル)が国債の所有者(個人や運用会社など)に支払われます。米国や日本など、多くの国では、国債の償還金の多くは借換債によって賄われています。借換債の発行とは、国の借金(国債)の支払金をねん出するために、国が再び借金する(国債を発行する)ことです。

米国がデフォルトを回避するには

米国がデフォルト(債務不履行)を回避する方法は以下の2つです。

(1)米議会が法定上限を引き上げる

(2)法定上限の適用停止の期限を延長する法的対応(議会で可決、大統領の署名による成立)を行う

米国がデフォルトを一時的にしのぐには

適用除外措置の期限が切れても、連邦債務残高が増えない限りは、新規に米国債を発行することが出出来ます。

連邦債務残高の増大を回避する緊急手段としては以下のようなものが挙げられます。

・SLGS証券(注)の発行・売却停止

・公務員退職・障碍者基金(CSRDF)、郵便事業職員向け退職・健康保険基金(PSRHBF)の運用向けに行っている財務省証券の発行・売却停止

・連邦職員退職年金基金(G Fund)が保有する財務省証券の再投資停止

・為替安定化基金(EFS)が保有する財務省証券の再投資停止
(注)SLGS証券は、連邦政府が州政府や地方政府に対して発行・売却するものです。州政府や地方政府が州債や地方債で調達した資金をSLGS証券で運用、運用益が得られるよう、連邦政府が州政府や地方政府を支援することを目的としています。

対応期限は2021年8月?それとも2021年10~11月?

イエレン米財務長官は6月23日、「緊急手段を駆使しても債務残高の増大が避けられるのは8月までだ。」と発言しました。

しかし7月21日、CBO(議会予算局)は、緊急手段を実行した場合、連邦債務残高の増大を抑えられる時期は10~11月までとの試算を発表。

現在(7月26日)時点では、 CBO(議会予算局) が示した 10~11月 が対応期限という見方が優勢になっています。

いつ対処する?

CBOの試算通り、2021年10~11月まで債務上限の増大が避けられるとすれば、2021年9月末が成立期限となっている2022財政年度(2021年10月~2022年9月)歳出法案などと併せて処理される可能性が高まっているとみられています。

2022年以降も債務上限問題はくすぶり続ける

バイデン政権が打ち出したAJP(米国雇用計画)、AFP(米国家族計画)の実現法案(歳出法案、税制改正法案、社会保障制度改正法案)は現在も協議中のため、必要な予算の金額や、お金が必要な時期が読めません。

よって、2020年以降も債務上限問題はくすぶり続ける可能性が高いといえます。その際、

米国債価格の下落(米金利上昇)
ドル安
米株安

が発生するリスクには注意したいところです。

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