米株や商品市況が回復した3つの理由
今週(2021/8/23~)、米国では株高が進行し、原油や鉄鉱石などの商品市況も回復しました。
その背景としては、以下の3つを上げることが出来ます。
1)FRBハト派化への期待
…先週、タカ派(テーパリングや利上げに前向き)であるカプラン・ダラス連銀総裁が、デルタ株の蔓延を背景に、緩和の縮小ペースを減速させる可能性に言及しました
2)中国の金融緩和期待
…中国の中央銀行総裁である易綱氏はは3日、金融政策を通じて中小企業など実体経済への与信を拡大すべきであり、総与信の伸びの安定度を高める必要があるとの見解を示しました
3)米国の景気が再加速することへの期待
…今月上旬に公表された米雇用統計(7月)は市場予想を上回る強い結果であったほか、ファイザー社のワクチンが正式承認されたことで、ワクチン接種がさらに進むことが期待されています
3つの理由について今後の注目点
1)についてはパウエルFRB議長が8月27日に行う講演(@ジャクソンホール会議)に注目です。
7月のFOMC議事録では、今後数回の議論を経てテーパリング開始とあり、9月FOMCでのテーパリング開始の可能性は低いものの、年内のテーパリング開始を支持する意見が優勢でした。例えば9月FOMCでのテーパリング開始が示唆されるならば、1)の逆で株価は下落、テーパリングが来年にずれ込む可能性に言及されるならば、1)の流れから、株価上昇となるでしょう。
2)の中国金融緩和については、短期的な効果に止まるでしょう。
中国は今年度、高成長よりも、規制強化による格差是正(中小企業、貧困層の救済)を優先的に行っています。中国人民銀行は今年7月に、預金準備率の引き下げにより経済の下支えを行いましたが、その後、当局の学習塾に対する規制強化などにより、中国株は下落。
つまり、人民銀行の金融緩和は、中国経済の減速を緩やかにする効果はありますが、規制強化による景気減速効果の方か大きく、人民銀行が緩和を行っても、景気加速や株高は困難かと思われます。
・中国の規制については↓が参考になるかと思います
3)の米景気、ワクチンについても、やや怪しくなっています。
・米国景気:学校再開でむしろ景気減速
9月4日から全米で失業保険の給付上乗せ分が撤廃されます。よって、失業者は収入が減るので、働きに出る必要性が強まります。更に学校の夏休みが終わるので、生徒の親は子供の面倒を見る必要がななくなり、これも親が働きに出やすくする要因です。
これら2つの理由で、今後は一段と、米国の雇用環境が改善し、景気が上向くことが期待されていました。しかし米国ではデルタ株の蔓延により、子供のコロナ感染と、それに伴う入院が急増しています。学校が再開すれば子供間での感染が拡大、それが親にも波及するのは必至です。
つまり学校の再開は米国の雇用環境を悪化させる可能性があるということです。
・ワクチン:正式承認は喜ばしいニュースですが…
ファイザー社のワクチンが正式承認されたことで、ワクチン接種がさらに進めば、それは米国だけでなく、世界経済にとっても好ましいことでしょう。
しかしワクチンの効果が数カ月しか続かない可能性や、変異株に対する効果が弱めである可能性が指摘され、米国では3回の接種が推奨され始めています。
つまりワクチン接種がペースアップしても、必要な接種回数が2回から3回に増えるのであれば、集団免疫の獲得(ほとんどの人が3回の接種を行う)にかかる時間は早まらない、ということです(単純計算で、3÷2=1.5倍以上、接種ペースが加速しないと、集団免疫の獲得時期は早まりません)。
ただし3)で述べた、米景気やワクチンと株価の関係は難しいところです。これらの状況が悪化すれば、1)で述べたようにFRBが緩和を継続する可能性が高まるので、その結果、株価は横ばい、あるいは上昇、といったケースも考えられます。
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