パウエル議長講演はサプライズなし
パウエルFRB議長は2021年8月27日、ジャクソンホール会合で講演を行いました。
同講演では、テーパリング(資産買入の縮小)に関するコメントが注目されましたが、
・ 「年内のテーパリング開始が適切になり得る」と述べる一方で、(→緩和縮小方向)
・市場の一部で警戒されていた、9月FOMCでのテーパリング開始決定に関しては言及されず (→緩和据え置き方向)
結局、市場が想定していたメインシナリオの一つである(注)、今年11月にテーパリング開始決定、12月にテーパリング開始、となる可能性が高まったに過ぎませんでした。
(注) あと一つのメインシナリオは、今年12月にテーパリング決定、来年1月にテーパリング開始ですが、2つのメインシナリオは、時期が1カ月ずれているだけなので、大差ないです。
パウエル議長の講演後は株高・債券高
パウエル議長の講演後、株高、債券高(金利低下)となりました。
パウエル議長講演というリスクイベントを無風で通過したことで、イベントを警戒し、一時的に現金に対比していた資金が、株式、債券に回帰し、株価、債券価格にともに押し上げられた形です。
9月3日の米雇用統計も大きな材料にはならず
9月3日に米雇用統計(8月)が公表されます。
テーパリングが決定された2021年6月FOMCにおける平均的な雇用改善ペースは+50万人/月程度。
9月3日に公表される統計では、+70万人/月程度の雇用増が想定されており、年内のテーパリング開始には十分な数字となるでしょう。週次の失業保険統計も緩やかに改善しており、雇用統計が大幅に下振れる可能性は低いといえます。
ただし、9月FOMCでのテーパリング開始宣言を促すほどの強い結果は想定しにくいです。それは、感染拡大に伴い、8月はレストランの来客数が大幅に低下しているため、足もとの雇用増の中心となっていた、飲食業で雇用が大幅に改善することが想定しにくいためです。
・米国でのレストラン予約者数(2019年との比較)
今後の展開
ジャクソンホールを無風で通過し、9月3日の米雇用統計でもサプライズが発生しにくい中では、緩和相場が継続する可能性が高いでしょう。つまり、米株を中心とした株高や、世界的に低金利が継続しやすいとみています。
ただし中国が世界経済の足を引っ張るリスクはくすぶっています。8月26日に中国の人民銀行は農村部支援を打ち出しましたが、対象が農村部のみであることから、景気押上げ効果は限られます。
中国政府は引き続き、経済成長よりも、規制強化による格差の是正を重視しているため、中国政府や人民銀行のサポートにより、中国経済が上向くことは当面、想定しにくいと考えます。
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