中国の国家統計局が8月16日に発表した主要経済活動指標(2021年7月分)は、いずれも6月から大幅に悪化、市場予想を大きく下回りました。
経済指標が悪化した背景
経済指標が悪化した背景としては、
1)河南省や長江デルタでの豪雨・洪水
2)コロナの感染再拡大
3)輸出の低迷
4)不動産および環境負荷の大きい業種に対する政府の規制
を上げることが出来ます。
中国の景気減速は2021年末までは続く
上記の1~3は早晩収束する可能性があるものの、「4)不動産および環境負荷の大きい業種に対する政府の規制 」、特に不動産に対する規制が和らぐ可能性は想定しにくい状況です。
それは中国政府が現在、経済成長よりも格差是正を重視しており、不動産バブルを潰すことで、貧しい人も住居を手に入れることが出来るようにしたいためです。
不動産業に対する引き締めを背景に、市場では2021年末頃までは中国の景気減速が続くという見方が優勢です。
景気の下支え策
7月の主要経済指標が下落、市場予想を大きく下回ったことにより、中国の中央銀行である中国人民銀行は、以下のような景気の下支え策(金融緩和策)を打ち出す可能性はあります。
・1年物中期貸出ファシリティ金利の引き下げ
・民間銀行に対する預金準備率の引き下げ
ただし、不動産に対する締め付けの方が大きく、景気減速を止めることは困難と考えられます。
実際、中国人民銀行は2021年7月に預金準備率の引き下げを行いましたが、経済指標の悪化や株価の下落を止めることは出来ませんでした。
中国の規制については↓もご参照ください。
7月の主要経済指標
鉱工業生産指数
7月の鉱工業生産は2019年比(注)で+5.6%と、6月の+6.5%から伸びが鈍化し、市場予想の+6.3%を下回りました。
その背景としては、
・輸出の減速
・環境負荷の高い業種の生産抑制
・河南省や長江デルタでの豪雨・洪水被害
を上げることが出来ます。
(注) 2020年のコロナによる影響を除外するため、実績、市場予想ともに、2019年対比での伸び率となるように変換しました
固定資産投資
7月の固定資産投資は、2019年比で+2.8%と6月の+5.7%から大きく伸びが低下、市場予想の+5.7%を下回りました。幅広い品目で投資が減速していますが、特にインフラと製造業関連の投資が大きく下げました。
小売売上
7月の小売売上は、2019年対比で+3.6%と、6月の+4.9%から伸びが鈍化し、市場予想の+4.7%を下回りました。。
7月下旬の南京市におけるデルタ変異株の感染拡大や、これを受けたロックダウンの影響が表れた形です。
不動産投資
7月の不動産投資の伸びは2019年対比で+6.4%と、6月の+6.4%から減速しました。
過去数年、新規住宅予約販売が好調だったために、デベロッパーは急いで住宅を作っているため、不動産投資は増加してはいるものの、当局の締め付けにより、伸び幅は減速している状況です。
新築住宅販売:前年比マイナス
7月の新築住宅販売は、面積ベースで2019年比+0.1%と、6月の+4.8%から減速しました。前年比(2020年比)だと7月は - 8.5%と、6月の同+7.5%から急減していることが分かります。
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