足もと、ユーロ高が進行しています。
日経新聞朝刊『南欧が照らすかユーロ高』(2021/6/2)にも、ユーロ高への言及がありました。
今回はユーロ高の原因と、今後のユーロの展望について深堀りしていきたいと思います。
2020年12月末に126円だったユーロは、2021年6月2日時点で133円まで上昇。
ユーロ高の背景には、欧州金利の先高観を挙げることが出来ます。
実際、2021年1月から5月中旬までは、欧州金利の上昇に伴い、ユーロ高が進行しました。
今後も欧州金利の先高観は継続し、ユーロの支えになるとみています。
5月中旬までの欧州金利上昇の背景
2021年5月中旬までの欧州金利の上昇の背景は、以下になります。
・原油や鋼材などの、商品市況の上昇が、世界的にインフレ率や期待インフレ率を押し上げ、長期金利の上昇要因に。
・欧米でのワクチン接種の進展も、経済活動正常化の期待から、長期金利押し上げ要因に。
・欧州でPEPP減額(緩和縮小)が台頭したことも、欧州金利を押し上げ。
・原油価格とドイツ10年金利
5月中旬から、欧州金利の上昇は一服
5月中旬から、欧州金利の上昇は一服しています。
それは複数の欧州中銀(ECB)高官から、PEPPの減額(緩和縮小)の延期を示唆する発言があったためです。
緩和が長期化することが意識されて、欧州金利の上昇は一服しました。
欧州金利の先高観は継続
ただし今後も、欧州金利の先高観は継続する可能性が高いとみています。
長期金利が上昇する要因は、中銀の利上げや、インフレ率の上昇など、様々なものが挙げられますが、景気対策も金利上昇要因となります。
それは景気対策により、景気が浮上することで、お金を借りてでも投資をする人が増えたり、インフレ率や成長率が上昇するためです(長期金利=期待インフレ率+期待成長率+需給要因)。
2つの景気対策
欧州基金
欧州ではコロナから経済を復興させるための基金が設立され、その規模は総額7500億ユーロ(約100兆円)にのぼる予定です。
現在、基金に100兆円あるわけではなく、今後、基金が債券を発行することなどにより、100兆円集め、それを景気対策に充てます。
フランスのボーヌ欧州問題担当相は5月31日、EUの復興基金の財源となる債券について、まず6月中に100億ユーロ(約1兆3000億円)規模で発行する計画だと仏経済紙のインタビューで明らかにしました。
このように今後、欧州基金にお金が集まり、それが景気対策に使われていきますので、欧州景気も押し上げられるでしょう。
欧州景気の回復自身が、ユーロ高の原因となりますし、欧州金利が上昇することによっても、ユーロは押し上げられる可能背が高いでしょう。
ドイツの総選挙
2021年9月にドイツの総選挙が行われ、これを機にメルケル首相は引退する予定です。
今回の選挙では、メルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)、その姉妹政党であるCSU(キリスト教社会同盟)に加えて、緑の党が連立を組むとみられています。
ドイツは1921~1923年におけるハイパーインフレの苦い経験から、財政拡張(国債をたくさん発行して、景気対策に充てる)ことに対して後ろ向きでした(Wiki『ドイツのハイパーインフレ』)。
しかし与党であるCDU、CSUが緑の党と連立を組むことで、財政拡張・景気対策に前向きになるとみられています。
よって、2021年9月の選挙を機に、ドイツが景気対策に積極化する可能性が高いことも、欧州景気や欧州金利の押し上げ要因となり、ユーロ高につながりやすいでしょう。
以上となります。参考になれば嬉しいです。
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